国際交流基金アジアセンターと東京国際映画祭の共同プロジェクトで、「アジアで共に生きる」をテーマに製作されたオムニバス映画「アジア三面鏡 リフレクションズ」の公式会見が10月26日、東京・六本木ヒルズで行われた。
アジアを中心としたクリエイターの発掘・支援を推進する同映画祭が、初めて映画作品を製作し、完成させた。メガホンをとったのは行定勲監督、ブリランテ・メンドーサ監督(フィリピン)、ソト・クォーリーカー監督(カンボジア)という、アジアを代表する3人。“アジアの過去と現在”をそれぞれの視点から描くことで、各国の社会や文化を、三面鏡のように照射。アジアの隣人同士が互いを理解し、アジア人としてのアイデンティティを模索することを目指す意欲作だ。
この日の会見には、3監督とともにルー・ベローソ(メンドーサ監督作「SHINIUMA Dead Horse」)、津川雅彦、シャリファ・アマニ(ともに行定監督作「鳩 Pigeon」)、加藤雅也、チュムバン・ソダチビー(ともにクォーリーカー監督作「Beyond The Bridge」)という、各作品のキャストも登壇。行定監督は、「今回のプロジェクトは、着地点がどうなるのか、不安に思いながらも楽しみにしていた。アジアの映画人たちが共同で作った映画を楽しんでいただきたい」と手ごたえのほどをうかがわせた。
韓国・釜山など、海外での撮影経験がある行定監督は、マレーシアの鳩舎のある家で家族と離れて暮らす老人と、ヘルパーの若いマレーシア人女性の心の交流を描く。現地での撮影はとにかく暑かったと明かし、「昼間の撮影が困難で、スタッフは基本的に日陰にいた」とニッコリ。日本の撮影現場との違いに関しても、「スタッフがとにかく仲が良くて、まず集合写真を撮ってから、困難な状況を共に乗り越えていくみたいな。あんまり怒っちゃいけないんで、しょうがないから何でも自分でやっていました」と振り返っていた。
来年1月で77歳になる津川は、「新婚旅行でマレーシアへ行ったほど、アジアは大好き」だという。役作りの一環で思わぬハプニングを招いたそうで、「僕は根が明るいから、こういう役は苦手。とんがった僕を頑張って出そうとしたら、アマニを泣かせちゃったらしいんです」と苦笑い。アマニは、「津川さんは役作りを徹底されていて、私も驚いてしまいました。静なる力をお持ちで、セットにお見えになると皆が硬直することもありましたし、私は覚えていた日本語のセリフを全部忘れてしまいました」と明かし、撮影がいかに充実していたかを笑顔で語った。
クォーリーカー監督が手がけた、日本とカンボジアをつなぐ時代を超えたラブストーリーに臨んだ加藤は「こういうプロジェクトに参加させて頂き、初めてカンボジアの監督とお仕事をする機会にも恵まれました。この経験によって、もっともっといろんな国の監督とお仕事をしていければいいなと思っています」と話し、真摯な面持ちを浮かべていた。
第29回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。