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2016.10.27 [イベントレポート]
「独立戦争後の苦しい時期も金(きん)・絹と、金・絹から作ったものは手放してはいけないものだったのです。」CROSSCUT ASIA『Emma’ マザー』-10/25(火):Q&A

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©2016 TIFF

右から チュッ・ミニさん(女優)、リリ・リザ監督、ヤヤン・C・ヌールさん(女優)
10/25(火)、CROSSCUT ASIA『Emma‘ マザー』の上映後、リリ・リザ監督、チュッ・ミニさん(女優)、ヤヤン・C・ヌールさん(女優)をお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
 
リリ・リザ監督(以下、監督):皆様こんにちは! またTIFFに戻ってこられて嬉しいです。今年はインドネシアの映画がフォーカスされているということで、とても光栄に思っております。たくさんの作品が上映されるので、皆様ぜひ他の作品もご覧になってください。
 
チュッ・ミニさん(以下、ミニさん):皆様こんにちは。ここに来られてとても嬉しいです。私はTIFFに初めて登場させていただき、ウチュ(ユフス・カッラ副大統領)の母親役として来られたことをとても嬉しく感じています。
 
ヤヤン・C・ヌールさん(以下、ヌールさん):コンニチハ! そしてありがとうございます。今年は10本以上のインドネシア映画が観られます。ぜひご覧になってください。
 
司会:リリ監督は、お二人の女優さんと過去の作品でも一緒にお仕事をされていましたね。
 
監督:はい、2002年の、私の2本目の作品でヌールさんに出演していただきました。とても素朴な物語なのですけれど、特別な作品です。そして東京国際映画祭でも上映された2008年の『虹の兵士たち』には、ミニさんに出演していただきました。
 
ヌールさん:リリさんの作品に出られたことを、とっても嬉しく光栄に思っております。なぜなら彼はインドネシアで最高の監督さんだからです。
 
Q:ユフス・カッラ副大統領の子供時代を描いたのはなぜですか?
 
監督:彼の話を映画化したいと思った理由の一つは、インドネシアは広い土地に様々な民族が住んでいますが、私が生まれた南スラウェシの生活と人となりを是非とも描いてみたかったからです。もう一つは、かねてより、家族の中で大きな強い柱である母親という存在を描きたいと思っておりました。私はこの映画を作る前に2回ほどユフス・カラに会っています。また映画が上映された後には夕食に招いていただき、おいしい食事をご馳走になっております。そのときは、彼はまるで母親のように、一番おいしい食事を用意してくれました。
 
Q:劇中できれいな布の「サロン」の演出が非常に映像的だと思ったのですが、ウチュの母親が「サロン」を売って生計を立てていたという展開は、監督のオリジナルですか? またインドネシアでの「サロン」の持つ意味を教えてください。
 
監督:母親がサロンを売って家族を支えたことに加えて、サロンを作って売ったということを、女性の尊厳の象徴として描きました。ユスフ・カッラの母親がサロンを作って売った話は本当ですが、ドラマティックな展開にする為にさらに脚色しました。
 
ミニさん:女性にとって、サロンというのは人生の一部でもあるのです。昔は上着を着てサロンをスカートのように巻いていました。またサロンは、例えばジャワ島ではバティックというサロンがあるように、地域によって素材や模様がさまざまに異なる織物なんです。
 
ヌールさん:トラディショナルな衣装として、インドネシアの女性は身に着けます。モチーフも土地によっていろいろあります。映画の中でアティラが着ていたものは、すべて南スラウェシのモチーフです。特徴は絹の織物であること。繭から糸を取り出して紡いで織ってこの模様にしてあるわけで、ただの布に模様を印刷してあるのではありません。サロンは今でも日常的に、男性はお祈りの時に腰に巻いていますし、私も毎日サロンは腰に巻いています。いつもはもう少し地味なもので、今日はパーティがあるので良いものを着ています。
私が今巻いているソンケットというサロンは、金糸銀糸を織り込んだ、とても高価なものです。
 
監督:そして私が生まれ育った南スラウェシのブギス人という民族は、独立戦争後の苦しい時期も手放さなかったものが二つあります。それは金(きん)と、金から作ったもの。そして絹と、絹から作ったものです。この二つは手放してはいけないものだったのです。
 
Q:実際のモデルがいることで、役作りとしてはどの辺に気を遣いましたか。
 
ミニさん:リリさんからこのお話をいただいた時は、とても嬉しかったです。ただ問題は、アティラさんがもう亡くなっていたことでした。彼女の日常を知りたかったので、アティラさんの長女のヌルさんに、どんな方だったのかお聞きしました。彼女は微笑みを絶やさなかったとのこと。そして家族のためにいつも忙しくしていて、料理をつくったり、サロンを売るのにいつも飛び回っていたりしていたということです。そしてもう一つ大事なのは、怒ったことがなかったということです。そういったことを聞き、シナリオをリリ監督とともに2ヶ月かけて読み込み、そして現地の言葉を学んで彼女のキャラクターを作り上げていきました。
 
司会:今回のインドネシア特集は、お手元に恒例のブックレットを差し上げています。
中には、映画地図というのがありまして、撮影のロケーションマップになっています。ぜひご鑑賞のお供に見ていただければと思います。東京には今回、インドネシアの監督さんや俳優さんがシンポジウムなどで続々といらっしゃいますので、何度でも足を運んでいただければと思います。ヤヤンさんは、今年野田秀樹さん原作の『三代目、りちゃあど』にご出演なさいます。東京公演が11月26日からということで、ご自分でひとことPRをいかがですか?

 
ヌールさん:ありがとうございます。11月26日から12月4日まで『三代目、りちゃあど』の舞台に出ます。私はインドネシア語、バリからの俳優さんがバリ語を使い、日本の俳優さんも5人いらっしゃいます。宝塚や歌舞伎や狂言の方々です。池袋のシアターウエストでやりますので、どうぞお越しください。
 

東京芸術祭2016 芸劇オータムセレクション / 日本・シンガポール・インドネシア 国際共同制作『三代目、りちゃあど』
2016年11月26日(土)-12月04日(日) 会場:シアターウエスト
出演:
中村壱太郎 茂山童司 ジャニス・コー
ヤヤン・C・ヌール イ・カデック・ブディ・スティアワン たきいみき 江本純子
久世星佳
『三代目、りちゃあど』HP
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