女優・のんがアニメ映画の声優に初挑戦した「この世界の片隅に」が10月28日、第29回東京国際映画祭の特別招待作品として上映され、のん、片渕須直監督がTOHOシネマズ六本木ヒルズでの舞台挨拶に出席した。
第13回文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した同名漫画を、クラウドファンディングでの資金調達を経て映画化。第二次世界大戦下の広島・呉を舞台に、18歳の少女すずが幾度も空襲にあいながらも必死に日常を生きる姿と、やがて訪れる昭和20年の夏を描いた。
主人公すずに力強い生命を注いだのんは、開口一番「今日はよろしくお願いします」とおずおずと頭を下げ、場内を和ませる。今作について「どんなことがあっても毎日がめぐってくるという、“普通”がすごく愛おしくなる作品です」と感慨深げに語り、「生きるということに涙があふれてきますが、悲しい涙ではなく、何があっても生活を続ける力強さに心が震えます。ぜひ、映画館に足を運んでいただけたらと思います」と真摯にアピールした。
演じるうえで込めた思いを問われると、「すずさんという人は、戦争にあからさまな嫌悪感を示す人ではないと思いました。それよりも、目の前にある毎日を、一生懸命に生きる部分を意識しました」と明かす。そんな姿に、片渕は「非常に演技派の声優陣がそろっていて、アニメの声優、洋画の吹き替え、舞台の方、皆さんこの映画のなかではものすごくナチュラルに演じてくれています」と述べ、「彼女が最もナチュラルに存在するすずさんを演じてくれて、誇らしいです」と激賞していた。
さらに今作はフランス、ドイツ、南米など、世界14カ国での公開が決定している。のんは「“普通”の切なさや感動はすべての人に響くものだと感じています。国外の方にも見て頂けることは、すごく素敵だと思います」と万感の思いを口にした。またこの日は、観客による写真撮影も許可され、のんはおだやかな笑みを浮かべながら客席に手を振っていた。
「この世界の片隅に」は、11月12日からテアトル新宿ほか全国で公開。なお第29回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。