10/26(水)、特別招待作品『大唐玄奘』の上映後、フォ・ジェンチイ監督をお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
 
フォ・ジェンチイ監督（以下、監督）：皆さまこんにちは。本日は私の新作を観に来てくださり、本当にありがとうございます。皆さんにお目にかかれてとても嬉しく思います。
 
Q：東京国際映画祭は今年で4回目のご参加ですが、監督にとってどんな映画祭でしょうか？
 
監督：何度もこちらの映画祭には参加させていただいているのですが、この映画祭という場で、色々なところからいらした映画人の方々と様々な交流ができるということは、本当に素晴らしいと思っています。そしてこれまでに何本か作品を出品させていただき、賞もいただきましたので、東京国際映画祭は非常に嬉しい記憶として強く残っています。今回も新作を携えて皆さんにお目にかかることができて、非常に嬉しく思っています。
 
司会：本作は、アメリカのアカデミー賞、外国語映画部門の中国代表の作品として選ばれています。
 
Q：中国圏では儒教が一般的だと思いますが、なぜ仏教の玄奘三蔵を取り上げられたのか、制作の動機を教えていただけますか。
 
監督：儒教は中国の人々の中に深く入りこんで、非常に大きな影響を与えてきました。しかし、やはり仏教徒は非常に多く、仏教に帰依する人、信徒となる人、また出家する人も非常に多いのです。また、そのようにしなくても、寺院には必ずお参りに行くという人も、今は本当に多くなりました。仏教は、他の宗教をはるかに超える支持を中国の人々の間で集めているのです。仏教は生活の中に深く根づいていると言って良いと思います。北京には雍和宮という有名なお寺がありまして、縁日になりますと、非常に多くの人が集まってきます。仏教徒ではなくても、何かしら仏様にお願いしたいことがあってお参りにくるのですね。
 
Q：キャスティングが難しいと思ったのですが、どのような想いで主人公の俳優さんを選ばれたのでしょうか。
 
監督：主人公を演じたホァン・シャオミンは、中国では影響力のある素晴らしい俳優です。
彼を玄奘に選んだのは、大きな理由があります。一つには、彼のお母さまが敬虔な仏教徒でいらして、彼が６歳の時に西安の大雁塔で僧衣を着て写真を撮っているほどです。もう一つは、史書によりますと、玄奘は非常に大柄で、素晴らしい体格をしていたそうで、ホァン・シャオミンさんの背格好は実にぴったりだと思ったのです。
 
Q：過酷な撮影現場だったと思うのですが、監督から見てどんな現場だったのでしょうか。ホァン・シャオミンさんに大変なことをさせているなという感覚はあったのでしょうか。
 
監督：ホァン・シャオミンさんなら、この役をきっとやれるという確信がありました。この映画は、中国の西域で撮りましたが、厳しい撮影になることは分かっていました。この役は、そうした環境に立ち向かい乗り越えていける人でなくてはいけません。俳優はヘアスタイルをとても気にするものですが、ホァン・シャオミンさんは髪の毛をすべて剃ってきてくれました。しなければならないことをまず乗り越えてくれたのです。また、撮影は砂漠という非常に暑い場所で6月から行われましたが、衣装は外側の袈裟を入れて3枚重ねで非常に重いものでした。そうした自然の環境に耐えられる人が必要だったわけです。歴史的に必要な部分以外は、コンピュータグラフィックを使用していません。ほとんどが実写です。俳優をそうした過酷な状況、つまり玄奘が苦難な道を乗り越えて経を取りに行ったのと同じような環境に置くことで、リアルな演技を出してもらうという意図もありました。
 
Q：いつ頃から玄奘を主人公とした作品を作ろうと思い、なぜ今この時期に作ったのでしょうか。
 
監督：玄奘というのは、皆さんご存知のように西遊記という小説で有名になり、その後さまざまな映像に取り上げられています。しかし、玄奘の業績とか、彼がどのような苦難の道を辿っていったのか、そのような彼の本当の姿というのはほとんど撮られていないので、かなり前から私は、彼の本当の姿を映画に撮るべきだと思っていました。また、中国とインドの友好交流についても、玄奘が経を取りにいったという歴史的な業績は非常に意義深いものだと考えていました。この映画の脚本は、「大唐西域記」、「三蔵法師伝」の２つの史書に基づいているのですけれども、インド（天竺）に経文を求めに行った玄奘は、一人で歩いて行ったと書かれていました。その困難な旅の中で、玄奘は様々なことを考えて歩いていただろうという我々の想像をヴィジュアル化したのです。