杉野希妃が監督・主演を務める「雪女」が10月28日、開催中の第29回東京国際映画祭コンペティション部門で公式上映された。杉野とともに出演した青木崇高、山口まゆ、佐野史郎は、TOHOシネマズ六本木ヒルズでの会見に臨んだ。
杉野は、第24回(2011)の同映画祭で「杉野希妃~アジア・インディーズのミューズ」として特集上映が組まれたことがある、規格外の逸材。女優だけでなく、監督、プロデューサーを兼ねることも珍しくない。今作は、小泉八雲の「怪談」に収録された一編である「雪女」に新たな解釈を盛り込んで映画化した意欲作だ。
映画化に至った経緯を聞かれた杉野は、「3年ほど前に原作を読み返してみたときに、その美しさに心ひかれました。私なりの解釈を加えて映画化したら、現代にも通ずる作品になるんじゃないかと思った」と説明。それでも、「演じながら『カット!』と言って、モニターへ走っていって確認する作業は試練でもありました。すごく客観性を求められたので、鍛えられましたね」と打ち明けた。
相手役の青木は、「僕らも大変でしたよ。それまで役者として対峙していたのに、いきなり目の前で『カット!』と言われるわけですから」と苦笑い。ただ、杉野監督の才能に疑問を挟む余地はないそうで、「杉野希妃という才能は、三足のわらじというか……。ひとつひとつ、全てに貪欲で、作り上げた作品を映画祭で発表していく。そう、この人と仕事をしたかったんです。『雪女』という作品でご一緒できて、本当に幸せでした」と手放しで称えてみせた。
今年のコンペ部門に選出された邦画は、今作と蒼井優主演「アズミ・ハルコは行方不明」(松居大悟監督)の2作品。邦画作品としては、「雪に願うこと」(根岸吉太郎監督)以来11年ぶり3作目の“頂点”獲得となるか、目を離すことができない。
なお、この日は「雪女」が2017年3月4日に東京・ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で順次公開されることも発表された。
第29回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。