10/27(木)、ワールド・フォーカス『ゴッドスピード』の上映後、チョン・モンホン監督(監督/脚本)、ナードウさん(俳優)をお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
チョン・モンホン監督(以下、監督):今日はこの映画を見に来てくださって、ありがとうございます。また東京に来れてうれしいです。
ナードウさん:<日本語で>皆さんこんにちは。私は台湾のコメディアンです。
司会:『ゴッドスピード』は「幸運を祈る」という意味だそうですが、なぜこのタイトルでこの企画の映画を作ろうとしたのでしょうか。
監督:最初は「ボンボヤージュ」という名前にしようとしたのですが、ある友人にあまりにも普通すぎるから違うものにしたほうがいいと言われました。「ゴッドスピード」という古風な英語があるからそれはどうかと言われて、それにしました。
この世の中では、人生のすべてが一路順風とは限りません。人生のために何ができるか、いつも考えていなければいけないと思ったわけです。例えば心の片隅に何か他人のためにできることがないかという、包容力、寛容な心をもっていることが大事だと思いました。
そうしてこそ、お互いに理解しあうことができるんだと思います。
Q:監督の映画は、前作もそうなんですが、皮肉な展開を撮られているような気がしました。今回のプロットを考えるにあたっては、どの辺から出発してこういうプロットを考えられるのでしょうか。
監督:映画はいつも皮肉な意味合いをもっていると思います。こういったエンディングの作品は初めて作りました。
ストーリーは少しずつプロットを組み立てていくわけですが、どういう風に最終的なところに持っていくのかは自分でもはっきりさせないまま展開していきました。多くの人はこの作品で私がこんなエンディングの作品を撮るとは思わなかったので、初めてですねと言ってくれました。
司会:記念すべきエンディングの作品にナードウさんは初主演ということでしたが、監督の作品に出演してみていかがでしたか。
ナードウさん:僕は、台湾ではテレビでバラエティー番組の司会だったりコメディーをやったりしています。チョン・モンホン監督と一緒に仕事をするのはこの作品で4作目ですが、今までの作品ではゲスト出演のような感じで少ししか演じる場面はなかったので、初めてこんなヘビーな役をしっかりとやらせていただきました。
脚本を初めて読んだとき、すごくいい役だし、いい話だと感じました。何度も監督の作品に出させていただいて、とても僕のことを信頼してくれているから、こういった役がいただけたんだなと思いました。撮影現場でも楽しく演じることができました。
Q:今回香港の喜劇王といわれているマイケル・ホイさんとほとんど二人での絡みが多くありましたが、マイケルさんとの共演についてお話をお伺いしたいと思います。
ナードウさん:マイケル・ホイさんとの共演は僕にとって素晴らしいチャンスだと思いました。なんといっても小さいころからマイケル・ホイさんのいろんな作品を見てきました。香港の、本当にコメディーの神様みたいな俳優さんなので、その人と共演できるというすごいチャンスをいただけて、すごくびっくりしています。でも、この映画の中ではマイケル・ホイさんと僕は役柄ではコメディアンとしての芝居は全然なく、コメディアンとしての要素がないまま結末に向かっていくわけです。
実はこの映画を今日初めて見たのです。撮影現場で一緒に演じているときはそんなにそのすごさを感じなかったのですが、スクリーンの中のマイケル・ホイさんのすごさを改めて思い知らされました。本当にさすがだなと思いました。
ますますマイケル・ホイさんへの尊敬の念が強くなりました。
Q:マイケル・ホイさんを起用した理由、経緯は何でしょうか。どういう演出をつけたのですか。役名もユニークでしたが、監督がつけられたのでしょうか。
監督:この物語のもともとの成り立ちは、新聞の記事で見たことです。台湾の北部から南部へ、タクシードライバーが20時間以上かけて移動したにもかかわらず、乗客に逃げられてお金をもらえなかったという話を読んだんです。
映画の中で小籠包のくだりがあったと思いますが、これは香港から台湾に来たタクシードライバーから私が聞いた話でした。この出来事を聞いたときにこの香港タクシードライバーを自分の映画に使おうと決めました。香港のタクシードライバーなら、この役にはマイケル・ホイさんがいいと思ったんです。私は小さいころからマイケル・ホイさんの映画をいろいろ見ていて、大好きな役者さんだったので、彼を起用することができて凄くうれしいです。
そして、役名は出演者の芸名をそのまま使っています。
Q:前作でもロケ地が印象的でした。ユニークな場所はどのようにして見つけているのでしょうか。
監督:ロケーションマネージャーにすべて任せています。(笑)
彼はプロデューサーでもあります。ロケハンだけでなく、資金調達からなんでもやってくれます。(笑)
映画の冒頭に出てくる古いボウリング場は、実際にはなく、セットとして作りました。
このシーンで大事だったのはあの長い長いソファーです。これを探す必要があったんです。あのソファーがないと、ガランとした場所になってしまうんです。ソファーをどけた後に、美術監督から、ここにボウリング場を作ってみてはどうですかという提案が出ました。ボウリングをしているシーンは投げた後に自分たちでまた並べ直していたんです。
司会:なぜ谷村新司さんの「昴」が使われていたのでしょうか。
監督:「昴」は私が去年中国大陸に旅行に行ったときに聞いたんです。その時聞いたのは中国語でテレサ・テンが歌うものでした。その後に原曲が日本の曲だと知ったんです。日本の原曲を知ってから、もっとこの曲が好きになりました。テレサ・テンのよりもっといいと思いました。「昴」の歌詞は人間だれしもにある、どうしようもない状況に追い込まれたときに、前に進もうという勇気をくれる歌だと思いました。
台湾の南部にはたくさんのラジオ局があるのですが、深夜番組で日本の曲をよく流しています。
「昴」を持ってきたのは、人は最終的にそれぞれの運命の分かれ道をたどっていくのですが、それにぴったりだと思ったからです。