第29回東京国際映画祭コンペティション部門出品作「天才バレエダンサーの皮肉な運命」が11月2日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、アンナ・マティソン監督と主演のセルゲイ・ベズルコフが会見した。
ロシアの名門、マリインスキー劇場の舞台監督や美術などを手掛けるマチソン監督が、90年代にキャリアを断たれた、元天才バレエダンサーの20年後の姿と、ケガにより人生の選択を迫られた様を描く。
主人公のアレクセイ・テムニコフは、元天才バレエダンサーだが、女好きの上に、ごう慢で冷淡な性格が災いし、周囲との軋轢を生んでしまうというキャラクター。ベズルコフは、「彼はハリネズミのようですが、外側にではなく、自分の内側にハリを向けています。バレエという芸術の前には、子どもや家を持つことは二の次。それが彼の哲学だったのです。狂っているけれど天才で、人生で残したかったことに成功しました」と分析する。そして、マティソン監督を「私の妻です」と紹介し、「私が大事にしているのは家庭、妻、そして4カ月になる娘です」と、映画の主人公とは異なり、一流の俳優であると同時に、よき夫であることをアピールしていた。
マティソン監督は、「ロシアの偉大の詩人プーシキンの言葉に、『天才と悪は共存するものではない』という言葉があります。天才に対する評価は、普通の人に行う評価の枠を超えてすべき」と持論を展開。劇中でマリインスキー劇場の芸術監督ワレリー・ゲルギエフが本人役で登場するが「バレエを撮るときに、本物のバレエを見せることが重要だと思いました。マリインスキーの人々に協力を仰ぎ、私も劇場関係所の仕事ぶりを知っているので(劇中のバレエに関する表現は)すべて本物です」とバレエ表現のクオリティの高さに自信を見せた。
東京国際映画祭は11月3日まで開催。