仮出所中のナセルは、兄のバーを手伝うが身が入らない。やがて自分が得意とするクラビングをビジネスとして立ち上げようとするが、ぎくしゃくとしていた兄との仲は一層悪化していく…。歓楽街を舞台に、移民系の男が底辺から這い上がろうとする様を描く人間ドラマ。
パリの歌舞伎町とも称されるピガール地区は、猥雑な歓楽街である一方で、近年は若者が住みたがる人気の地区でもある。様々な人が行き交うこの地を舞台に、本職はメッセージ系のラッパーである監督コンビが、現在のパリを象徴するリアルな人間模様を描き出した。人物に近く寄り添うカメラにより、観客も映画の中のドラマを生きることになる。パリのナイトライフの裏側に、移民系フランス人兄弟の葛藤の物語を交え、初監督作とは思えない臨場感溢れる演出力が発揮されている。主演のレダ・カテブは現在のフランスを代表する若手演技派の一人であり、強面から善玉まで幅広く演じる力により、W・ヴェンダース監督最新作を含め、国の内外で出演作が相次いでいる。