ひとつのテーマのもと、3人の監督がオムニバス映画を共同製作するプロジェクト「アジア三面鏡」。第1弾は、「アジアで共に生きる(Living Together in Asia)」をテーマに、ブリランテ・メンドーサ、行定勲、ソト・クォーリーカーの3監督が、日本とフィリピン、マレーシア、カンボジアを舞台に製作。それぞれの国の文化や歴史が、登場人物の現在・過去と共鳴し、心打たれるストーリーが誕生しました。
世界的に活躍しているアジアの気鋭監督3名が、ひとつのテーマのもとにオムニバス映画を共同製作するプロジェクト「アジア三面鏡」。それぞれの時代と文化を反響させ、新しい光を生み出すシリーズ第1弾『アジア三面鏡2016:リフレクションズ』は、「アジアで共に生きる(Living Together in Asia)」というテーマのもと、様々な国のスタッフ・キャストが結集し、日本とカンボジア、フィリピン、マレーシアの各国間を行きかう人々の生きる姿を映し出しています。映画でアジアの人々がひとつになる、新しい一歩となる作品が誕生しました。
製作:国際交流基金アジアセンター/ユニジャパン(東京国際映画祭)
特別協賛:IMAGICA
統括プロデューサー:久松猛朗
『SHINIUMA Dead Horse』
監督:ブリランテ・メンドーサ
2016年|カラー
舞台は北海道・帯広。SHINIUMA(死に馬)という意味深長なタイトルのもと、鉄の橇(そり)を馬に曳かせるユニークなスタイルの「ばんえい競馬」と、牧場で働いていた不法滞在のフィリピン人労働者が強制送還される顛末が、即興性と躍動感に満ちた監督特有のタッチで描かれる。冒頭と掉尾に日本とフィリピンの競馬場を登場させ、酷寒の北海道から灼熱のフィリピンへの移動を一筆書きのように描ききる構成の妙にも注目。
[あらすじ]:真冬の北海道、帯広のばんえい競馬。レースで当てたフィリピン人のマーシャル(マニー)は札束を握ってご機嫌で帰路につくが、彼が馬の世話をしている牧場に入国管理局の担当官がやってくる。不法滞在者のマニーは捕まり、本国に強制送還となる。マニラまでは飛行機、空港から長距離バス、ジープニー、バイクタクシーを乗り継いで故郷の村へ。だが、もう家族はおらず、泊まるところもない。結局、マニーはサンタ・アナ競馬場の厩舎に潜り込むが…。
『鳩 Pigeon』
監督:行定 勲
2016年|カラー
行定監督が舞台に選んだのは、多くの日本人高齢者が実際に暮らしているマレーシア・ペナン島。鳩を飼う孤独な老人を中心に、息子との確執や介護ヘルパーとのふれあいが綴られる一方、太平洋戦争の遠い記憶も挿入されている。シャリファ・アマニの役名「ヤスミン」には、監督が敬愛するマレーシアの名匠、故ヤスミン・アフマドへのオマージュがこめられている。撮影には、ウー・ミンジン、エドモンド・ヨウらマレーシア映画界で活躍する若手監督たちが協力した。
[あらすじ]:マレーシア・ペナン島。田中道三郎は2階建ての大きな家でヘルパーたちに付き添われて暮らし、屋上の鳩舎で鳩を飼っている。息子の雅夫は月に1回、日本からやってくるが、冷淡にもすぐ帰ってしまう。ある日、新しいヘルパーのヤスミンが雇われ、道三郎の世話をすることになる。様々なトラブルの末にふたりは心を通わせていく。道三郎はヤスミンとその恋人アリフの手を借りて、兄たちが戦死した海辺へ行き、鳩を大空に放とうとする…。
『Beyond The Bridge』
監督:ソト・クォーリーカー
2016年|カラー
ソト・クォーリーカー監督は、プノンペンに実在する日本カンボジア友好橋(チュルイチョンバー橋)の建設を物語の中心に据え、同国の内戦から復興へ、時代を超えて祖国カンボジアと日本をつなぐラブストーリーを作り上げた。主演の加藤雅也はアジア作品への出演経験が豊富だが、本作では橋の建設に携わった人物の青年期とその後を見事に演じ分けている。また本作には、自国には殆ど残されていない、内戦時の記録映像も織り交ぜられている。
[あらすじ]:1992年の着工から2年、破壊されていたプノンペンの「日本橋」が新たに完成した。橋の修復に携わった日本企業の社長・福田は、かつてカンボジアで過ごした日々を回想していた――。1970年代前半、橋の建設のためカンボジアに来た福田は美しいミリアと恋に落ち、結婚して日本で暮らす約束を交わす。しかし、やがてクメール・ルージュが台頭し、危険を感じた父親が福田を帰国の途につかせたのだった――。あれから20年。ミリアは生きているのだろうか。そうした思いを胸に、福田は橋にたたずむ。
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