病院に勤務するマリヤナの人生は、望もうが望むまいが、彼女の家族を中心に回っている。強権的な父親、障害を持った兄、無責任な母親。彼らは小さなアパートで重なりあいながら、互いにイライラして暮らしている。そんなとき、父親が倒れ、突如としてマリヤナに家族の長としての責任が押し付けられてしまう。
本作の舞台となる美しいダルマチア地方はクロアチア有数の観光地であるが、ジュシッチ監督はその華やかな光と対比するように、狭く窮屈で雑然とした住まいに暮らす家族に焦点を当てた。自伝的内容では無いものの、登場するキャラクターの多くは監督が良く知る人々をモデルにしている。当初は印象の悪い人物たちに対し、観客が徐々に好意を抱くように導く演出に、監督のキャラクターに対する愛と理解が感じられる。自由になることの難しさ、そして場合によっては敵であっても身近な存在に囲まれる家族の方が居心地がいいかもしれない、というジレンマのリアリティは絶妙である。見事なカリスマ性を発揮する主演のミア・ペトリツェヴィッチが演技初経験ということにも驚かされる。
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