1964年10月10日に開幕した東京オリンピック。この記録映画の総監督として市川崑が抜擢されたのは、開会の約5か月前だった。これは「スポーツ・ファンだけのための映画じゃない」その精神を市川はスタッフに徹底。キャメラは生まれ変わってゆく東京の街や、勝者、敗者を問わず選手たちの表情を記録した。
各競技は超望遠レンズ、スローモーション、複数のキャメラとアングルで撮影され、ラッシュフィルムは約70時間に及ぶ。完成した作品は「記録なのか? 芸術なのか?」という議論を呼んだ。単なるスポーツ大会の記録ではなく、あくまでもそこで息づく人間の姿を追った市川崑の姿勢は、斬新な映像テクニックと相まって、永遠に新鮮であり続けるだろう。
協力:JOC