1990年代初頭の内モンゴル。12歳の少年シャオレイの夏休みは、映画撮影所で働く父と教育熱心な母に囲まれて過ぎていく。世の中は静かに、しかし大きく動いており、国営の職場が生活の安定を保障してくれる時代は終わりつつある。シャオレイの家族もその例外ではない。やがて秋が到来する…。フフホト出身のチャン・ダーレイ監督がモノクロで描く、四半世紀ほど前の内モンゴルの一断面。中国語圏で近年流行のノスタルジックな青春映画とは一線を画し、少年の目がとらえた世界をドライに切り取っている。監督によれば、80歳の寝たきりの祖母と面会したとき“白日夢の魔法”に襲われ、本作の構想が浮かび上がったという。製作総指揮をペマ・ツェテン監督(『オールド・ドッグ』『タルロ』)が務めている。
【監督メッセージ】
何年も前の日曜、私はめったに訪ねることのない祖母の家でランチを食べていました。寝たきりになった80歳の祖母の口に、母がスプーンで食べ物を運んでいるのを見ていたら、突然、人ひとりの人生が逆戻りする感覚に襲われました。1994年の夏、祖母の母が重度の寝たきりになりました。その時、娘に背中を支えられ、流動食を口に運んでもらっていた、まさにその光景が、また目の前で起きている。その瞬間、80年代のポップソングと列車の汽笛が遠くから聞こえてきました。白昼夢の魔法が、この映画を撮るインスピレーションを与えてくれたのです。