第29回東京国際映画祭コンペティション部門出品作「サーミ・ブラッド」が10月30日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、アマンダ・ケンネル監督と主演のレーネ=セシリア・スパルロクが会見した。
ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの北部に存在する少数民族であるサーミ族。1930年代、スウェーデン北部の山間部で暮らし、劣等民族とみなされ差別的な扱いと従属を拒んだ少女は、運命を変えようと決意する。スウェーデン=デンマーク=ノルウェー合作映画。
今作が長編デビュー作となるケンネル監督は「私も親族もサーミの血を引いていて、その多くがサーミであることを嫌っています。この作品に出てくるようなサーミ語使うことを禁じた寄宿学校で、スウェーデン語で教育を受けた親族がたくさんいるので、アイデンティティを消し去ること、言葉や伝統文化を忘れて違う人間になるのはどういうことかを考えて作った作品」と構想のきっかけを明かす。
ケンネル監督と同じくサーミ族の血を引く女優のスパルロクは、「私も伝統やアイデンティティを捨てる人を近くで見ていましたし、差別のこともよくわかります。(劇中の)妹は実の妹だったので安心して演技ができました」と撮影を振り返る。女優の仕事をしていないときは、家族と共にトナカイの世話をしているそうで、「トナカイを飼っていた(映画の主人公)エル=マリアはすべてを捨て去りましたが、私はこの仕事が大好きで誇りを持っています。大事なアイデンティティであり、伝統文化だと思っています。前の世代は恥じていたことですが、ようやく私たちの世代で誇りに思えるようになってきたと思います」と笑顔で話した。
以前はサーミ族はスウェーデン語の寄宿学校に入るのが強制されていたが、今は任意となっているそう。ケンネル監督は、現在は、放牧用の土地を追いやられたことによる自殺問題などがあると語る。劇中で村の少年たちがサーミ族の少女たちに投げかける侮蔑的な言葉については「サーミの子供たちを対象に開いたワークショップで、自分たちが嫌だと思ったことを聞いたことをそのまま使いました」といい、「彼女(主人公)の人生を1本の映画で描くことはできないので、次回作でその後の人生を描こうと思います」と続編への意欲を見せていた。
東京国際映画祭は11月3日まで開催。