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2016.10.31 [インタビュー]
結成20周年のラップユニット、移民たちの窮状を映像で訴えた理由 『パリ、ピガール広場』
La Rumeur  
第29回東京国際映画祭のコンペティション部門に参加した「パリ、ピガール広場」は、結成20周年を迎えるラップユニット“La Rumeur”のアメとエクエの初長編監督作。90年代からカウンターカルチャーの中心的存在となりパリに住む移民たちの窮状を訴え続けてきた彼らが、今作ではメッセージを映像に込めて…。
 
――ラップから映像へ。メッセージ表現を変えたきっかけ、理由はなんですか?
 
エクエ監督:まあ、いまもラップは継続して活動しているけどね。
 
アメ監督:以前から、こういう映画作りをしたいという欲求や野心はあった。だから短編映画を作って準備をし、数年かかってやっと長編を作ることができた。我々は、パリではアーティストとしてはかなり豊富なキャリアを持っていても、映像の分野が欠けていた。そこで、これでまでの活動で培った部分をすべて反映できる映画に、いよいよ着手したというわけ。この映画は、これまでの音楽活動から大きな影響を受けて、ライブ感を大切にしながらいくつものシーンを撮ったんだ。
 
――言葉を重視するラップよりも、映画の方がメッセージを伝えるツールとしては普遍的だと感じませんか?
 
エクエ監督:まさにその通り。僕たちのラップはフランス語なので、限られた人々にしかメッセージが伝わらない。でも、映像であればフランス語がわからない人にも伝わって、ユニバーサルな広がりができる。また、主人公の兄弟を演じたスリマヌ・ダジやレダ・カテブのような素晴らしい俳優が演じることによって、僕たちが考えていたことがより深く強くアピールできることも映画ならではの効果だよ。
 
――ピガール広場でバーを営む兄アレズキと出所したばかりの弟ナセルを中心に、彼らの周囲で同じように必死で生きる人々の姿にスポットを当てたもの。それぞれがどこかにむなしさと悲しみ、そして怒りをはらんでいますが。
 
アメ監督:描きたかったのは、貧しい人々が今のパリで生きていくことがいかに難しいかということ。たとえば、合法か違法は別として、金を稼がなければ住む家も店も維持できないという不平等な現実。それでも、僕たちの周りの人間は、なんとか生き延びようと模索している。そういう現実をリアルに描きたかった。
 
――弟ナセルを演じたレダ・カテブさんは、「ロスト・リバー」(14)や「ヒポクラテス(ヒポクラテスの子供達)」(14)などにも出演するフランスの売れっ子俳優。本作への出演の経緯は?
 
レダ・カテブ(以下、カテブ):アメとエクエとは、ずいぶん前からの知り合いで、彼らの短編映画に出演したこともあります。今回は脚本が完成する前から依頼をもらって、彼らの強いメッセージに共感しました。もちろん、製作段階から参加できたこともいい経験でした。役のナセルは、僕自身との違いはあったけれど、演じるというよりその役を生きるというのが僕のスタイルです。話し方、動き方はもちろん、感情の動きもかなり理解しようと監督たちと話し合いました。
 
――バストアップのショットが多用されたことで、観る者は登場人物の息づかいや焦燥感を肌で感じることができました。
 
アメ監督:最初から主人公に寄り添って撮影したかったので、なるべく近くから撮影することを意識した。まるで観客が、「主人公の肩に乗っている?」「いつのまにかピガール広場という特殊な街に頭を突っ込んでしまった?」と思うくらいにね。観ている人に、登場人物にも場所にも親近感を持って欲しかったんだ。
 
――東京でいうならば、新宿の歌舞伎町のような、猥雑で人のごった返すピガール広場の喧噪が自然に撮れていましたが、ロケはどのように?
 
アメ監督:本作の成功のためにも、自然にありのままで撮影することが不可欠だった。ピガールの街は、ある意味、主役でもあるからね。
 
エクエ監督:もともと、この街のことは知り尽くしている。ずっと昔から僕たちのオフィスもここにあるし、コンサートも何回も開いている。だから撮影のため通行を止めたり、テープをはったりはしなかった。撮影隊はとても静かに謙虚に街に入り、俳優は街の人々にとけ込んでいた。固定カメラはほとんど使わなかったよ。
 
カテブ:僕は、ああいう風に自然に人並みに入って撮るのが好きなんだ。歩いている人たちも、自然に受け入れてくれて邪魔も入らなかった。だからこそ、ああいう演技ができたと思う。
 
――新人監督のプロデュース、まして野外ロケが多い作品で大変だったことは?
 
ブノワ・ダヌー:確かにピガール広場のロケは大変でしたが、それでも僕と監督の間には確固たる信頼感があるので、いっさい不安はありませんでした。共に冒険を楽しんでいる感覚でしたね。プロデューサーというと、資金面だけにタッチする仕事のように思いますが、今回は企画の立ち上げからすべてを共同で進めてきました。この作品をやろうと思った決め手はふたつあって、ひとつはシナリオが魅力的だったこと。そしてもうひとつは、監督たちが、普段は陽の当たらない人たちにスポットを当ててその現状を描くという志に共鳴したから。その結果、素晴らしい作品ができあがったと、自負していますよ。
 
(取材/構成 金子裕子 日本映画ペンクラブ)  
 
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