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2016.11.01 [イベントレポート]
「映画作ったというよりは、(舞台を)再現したっていう感じではあります。」日本映画スプラッシュ部門『At the terrace テラスにて』-10/29(土):Q&A

テラスにて

©2016 TIFF

左から 師岡広明さん(俳優)、岩谷健司さん(俳優)、石橋けいさん(女優)、古屋隆太さん(俳優)、 山内ケンジ監督
 
10/29(土)、日本映画スプラッシュ部門『At the terrace テラスにて』の上映後、師岡広明さん(俳優)、岩谷健司さん(俳優)、石橋けいさん(女優)、古屋隆太さん(俳優)、 山内ケンジ監督をお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
 
 
矢田部吉彦プログラミング・ディレクター:山内ケンジ監督、改めてスクリーンでご覧になって新たなご感想などありましたらお聞かせください。
 
山内ケンジ監督(以下:監督):これだけ多くの人に観ていただくのは初めてなので緊張して観ていました。
舞台とは違い、映像になると生身の人が動いているのと違いますから、最初の導入部分は舞台よりも静かで、シーンも変わらず、ずっと話している場面ですので、お客さんがついてきてくれるか不安でした。しかし、だんだんお客さんが入り込んでいる感じがあったので安心しました。
 
矢田部PD:舞台の時からこの作品は映像化に向いていると思っていましたか。
 
監督:そうですね…舞台の時から…思って…いましたね(笑)。昨年(2015年)の東京国際映画祭スプラッシュ部門に選んでいただいた『友達のパパが好き』をキャスティングしている段階では、この『At the terraceテラスにて』の舞台版の稽古をしていました。そして舞台の本番の最中に、『友達のパパが好き』の次はこの作品を映像化できるかなと思い始めていました。
 
矢田部PD:キャストの皆様にお伺いします。舞台がそのまま映像になったものはご覧になる機会は多くあると思いますが、舞台が映画になったものを自分でご覧になるのは珍しい体験かと思うのですが、ご覧になっての感想をお願いいたします。
 
古屋隆太(以下:古屋さん):舞台の上で一か月強、稽古した上で、さらに舞台で本番を何度もさせていただいていました。映画の撮影はそれから一年後でしたが俳優にはよく練られていたものが体に残っていました。演じる上でのリアクションの細かさは、舞台では一点に集中していると周りを見ることができなかったので、映画では舞台よりも周りを見ることができ面白かったです。
 
石橋けい(以下;石橋さん):表情が細かく見られるのが大きな違いですよね。舞台をご覧になった方は、引きで表情を見ているのでこんな顔をしていたんだという答え合わせにもなったりして、この点が映像との大きな違いだと思います。
 
岩谷健司(以下:岩谷さん):結構、長回しで撮られていたので、僕たちもどこで撮られているか分からない状態で演じていました。結構こんな顔していたんだなという無自覚な顔があって面白かったですね。
 
矢田部PD:カメラは数台で撮られていたのですか、長回しで撮られていたのですか。
 
石橋さん:三台です。
 
監督:はじめは二台で行こうと思ったのですが、カメラの担当が数を増やし、最終的には三台で撮っていました。据え置きのカメラを含めれば、四台のカメラで撮っていました。日によって違うんですけど。
 
師岡広明(以下:師岡さん):僕、実は舞台をやってから映画化された作品に以前出演したことがありまして、『生きてるものはいないのか』という作品でした。舞台も映画も両方出演させていただきました。映画版の時は、僕の役を僕よりイケメンの方が演じておりまして、僕はその方に嫉妬をするような役でした。舞台と映像で役が変わったんですよね。今回は同じ役をやらせていただいてありがとうございます。
 
矢田部PD:舞台と映画では演じ方は変えられたのですか、あるいは監督から舞台はこうだけど映画ではこうしてというような指示があったのですか。
 
岩谷さん:動き的なことは現場の状況で変わりましたね、大きく演技は変わっていないと思います。
 
監督:石橋さんが現場でやりすぎているような印象があり、現場で何度か質問はありました。
 
石橋:舞台よりももう少しやっちゃえ。という部分があり、やって見せて、有り無しを判断してもらえたらと思っていたので、舞台の時よりもさらにテンションが上がっていたかもしれないです。
 
矢田部PD:ありがとうございます。質問が……ないようなので、私からもう一問質問させてください。ハイソサエティといいますか、ブルジョアの世界を描いて、欧米文化に対する、どこか屈折した見方なのか、監督がこの戯曲を書いた時、あるいはこの映画を作っている時に、それはブルジョア的な文化に対する憧れなのか、茶化しなのか皮肉なのか、面白くなりそうだからただ選んだだけなのか、そこ(の意図を)を教えていただけますか。
 
監督:この映画のコピーが「100%富裕層向け」って書いてますけど、後から宣伝の時に考えて出したわけで、書いてる時はそれほど明確に富裕層を茶化そうと思っていませんでした。下北沢のザ・スズナリという小劇場で公演を行って、小劇場の中でもこういう人達を描くっていうのは珍しい、他ではあまりやってないっていう事でしたね。キャスティングの部分も、僕のお芝居では重要なんですよね。内容よりもまずはキャストを決めてから書きます。キャストを考えると、特に女性二人は、完全にあてがきでした。そこからこのような内容になっていった、というのが実際のところです。ただ、演劇ですから、その時の時代を描くものだと思っていて、当時の事件っていうか、日本の状況とか、企業名とか、シリアの状況だとか具体的な名前が出てきますよね。そういった部分は取り入れていました。
 
矢田部PD:私は外国映画も選んでいますが、外国映画って、パーティーのシーンがいっぱい出てきて、必ず踊るんですよね。それで、外国のパーティーで踊っているのっていいな。と思う時があるんですけど、やっぱり日本のパーティーで踊るとキツイな、っていうのが(会場・笑)でもそこがすごくよかったんですね。改めての発見として。踊りのシーンについては監督に何か「欧米コンプレックス」という言葉とは違うんですけれども、あそこ(パーティーで踊るシーン)にポイントがひとつあるような気がしてしまったんですけれども、何か特別な意図はありますか。
 
監督:踊りのシーンは外国、欧米の映画とかでは、パーティーで踊りが出てくる。定番の要素の一つとして出したいなとは思っていて。でも、踊り(のシーン)を作った理由っていうのは、一応、叫ぶためみたいなところはある。あと、斉藤雅人さん(演・岡部たかし)がぶっ倒れる、何度もぶっ倒れる。そういうのを作る為に。そういう理由もあって。
 
矢田部PD:ありがとうございます。すこし、だんだん聞きずらいところに行くんですけど、フェティシズムについてお伺いしたいん出すが、先程、あてがき(をした)とおっしゃっていましたけど、二の腕も比較の上でのあてがきだった訳ですよね。監督の、監督なりのフェティシズムっていうのは?
 
監督:それほどね、特にないんですけどね。先程申し上げた通り、キャストが決まっていたので、平岩紙さんていうのは、そもそも芸名が、紙のように白いから「紙さん」って名付けられたんですね。松尾スズキさんがつけたと思いますけど。だから白いのは有名な話で。でも大人計画の舞台なんかで「紙さんは白い」っていうのが全面的に出てるお芝居っていうのはそんなに見たことない。だから、やっぱり優れたところを利用したいっていうことから始まっていて。でも二の腕は、フェティシズムまで行くか分からないけど、嫌いじゃないです(笑)。鎖骨とかね。結構好きだと思います。石橋さんの胸に関しては、長年の経緯があるといいますか、皆さんご存知の。結構、いろいろ苦労して…
 
石橋さん:そうなんです。私、胸がそんな大きくないんですよ。ちょっとコンプレックスで。それがある時、監督にばれてしまったんですよ。そしたら次の作品で、すっごい巨乳の役を書いてくださって。詰めて詰めて(胸を)作ったら、すごく嬉しかったんですね。それを「嬉しそうだね~」って。(笑)それ以来、そういう巨乳のキャラクターで何作か書いてもらって。
 
監督:そうそうそう。その時はね、舞台なんですけど、フェリーニみたいな、女王様みたいな、豊満な人をやろうと思って。最初はわざとらしく、人工の胸をつけようと思いました。そしたら「一度(胸を)上げてやってみます」って。そうしたら(人工の胸を)作らなくてもうまくいったんですよ。そういう経緯があります。
 
矢田部PD:それで、いわゆる役柄を得ることによって、自分の持っていたコンプレックスが解消されるっていうのは、演劇の方はそういう経験は誰しもお持ちなんですか?役柄が自分を実は変えたっていう。
 
岡部:僕はないですね。
 
矢田部PD:すごく印象的なエピソードだなと思いまして。ありがとうございます。山内監督は、大人のドラマが足りないっていうような、「世間の大人が楽しめるようなドラマを届けよう」っていうような意識はおありですか?
 
監督:自分が年を取ってますからね(笑)。自身の前作も若い女の子二人がメインの話でしたし、映画界的に言うと、やっぱり少ないと思います。大人向けっていうか、ものすごくあからさまに年配層向けってありますよね。シネコンで午前中からかかるような。それは悪い事じゃないんですけど、でも(ターゲットが)はっきり分かりすぎているなと思います。だから、その(若者向けと年配向けの)中間というか、はっきりした部分が無いないところは狙いたいなと思っています。
 
矢田部PD:そこは、海外のお客様にも届きやすいやすいのかなという気がちょっといたしております。
 
Q:すごく楽しく見させていただきました。ありがとうございます。今回映像化という事だったんですけど、いろいろ視点を変えるという演出をされずに、舞台と同じようにお作りになられたのは、何か意図がありますか?
 
監督:映画化するにあたってはいろいろ考えたんです。別荘が、軽井沢の貸別荘で撮影したんですけど、立派なリビングやキッチンがワンフロアにあって、中のシーンを撮ることもできたんですけれども、そういう部分を描いても、結局中途半端になっちゃうかなと思って、いろいろ考えた末、もういっそ舞台と同じようにテラスだけにしよう、という風にしました。自分としては、実は全然変えてないんですよ、戯曲から。普通は2013年のアメリカ映画『8月の家族たち』のように、微妙に(変える部分が)あると思うんですよね、シーンとか。完全に変えていなくて。成立するなと思ったから変えなかったんですけどね。一度やったことだから、映画を作ったというよりは、(舞台を)再現したっていう感じではあります。
 
矢田部PD:私も思ったのは、テラスっていう場が、そのまま舞台、ステージにもなっている訳で、テラスっていう設定は、映画の中にはありえるので、演劇を描くにあたっては、コロンブスの卵的にテラスっていう場所が相性がいいんじゃないかっていう気がしたんですけど。
 
監督:そうですね。そう思います。本当にいい条件の場所があったので。舞台は上下が逆になっちゃたりとかありますけど、建物ですから、そういうこともなくて、よかったと思います。
 
矢田部PD:ありがとうございます。あっという間に時間がきてしまいました。ここで締めさせていただきます。ありがとうございました。改めまして告知を申し上げたいと思いますが、この作品は、映画祭が終わりましてすぐの11月5日(土)から11日(金)まで、リニューアルオープンする新宿武蔵野館のこけら落としで7日間レイトショー上映があるということで、連日トークイベントも予定されているということで、キャストの皆さんの連日のご登場を期待してよろしいでしょうか。
 
石橋:はい。
新宿武蔵野館ホームページ
 
矢田部PD:またテラスを覗きたい方はぜひお誘いあわせの上、お越しいただけたらと思います。監督、最後に一言、締めのお言葉をいただけますでしょうか。
 
監督:前作の『友達のパパが好き』っていう、去年この映画祭に出品された映画が、ずっと公開していましたが、最後にもう一回だけ下北沢のトリウッドというところで、11月12日(土)から上映されますので、もし御覧になっていない方は、その作品も観ていただきたいと思ってます。紙さんと石橋さんも出ています。
下北沢トリウッドホームページ

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