故新藤兼人監督の孫でもある映画監督の新藤風が手掛けた「島々清しゃ(しまじまかいしゃ)」が11月2日、第29回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門で上映され、新藤監督をはじめダブル主演の安藤サクラと伊東蒼が、TOHOシネマズ六本木ヒルズでの舞台挨拶に立った。
映画は、沖縄・慶良間諸島を舞台に、耳が良すぎて少しの音のズレさえも頭痛のタネになってしまう少女・うみ(伊東)と、コンサートのために東京から島へやってきたバイオリニストの祐子(安藤)が心を通わせていく様を描く。本作のタイトルは、島々の清らかで美しい佇まいを歌い上げた普久原恒勇の沖縄民謡「島々清しゃ」からつけられた。
「転がれ!たま子」以来11年ぶりにメガホンをとった新藤監督は「祖父が亡くなって空っぽの状態になっていた頃に物語と出会い、苦しくても自分の望みのために真っ直ぐに生きるうみという主人公に魅力を感じました。この作品を描くことで、私自身が救われたんです」と述懐した。「ずっと仕事をしたいと思っていた」という監督のラブコールを受けた安藤は、「女優としては1年と数カ月ぶりに参加した作品。『役者として参加したい』という気持ちの前に、物語で描いている場所に行ってみたいという気持ちが芽生えました」と、出演の理由を明かした。
うみに扮した伊東は、「湯を沸かすほどの熱い愛」にも出演している注目の子役。「緊張しいで、オーディションにも合格しないと思っていた」と話す伊東を見て、「とても人見知りな子で、頑張っても声がどんどん小さくなっちゃうんです。でも芝居をした瞬間、『この子しかいないな』と思いました。蒼ちゃんがいなかったら映画は成立していません」と、卓越した演技力を絶賛した。
また、第39回日本アカデミー賞で最優秀女優賞を受賞した安藤は「賞をとってから変化は?」という質問に対し、「受賞したことでの変化はない」としながらも、「私、神社に行ってもお願い事はしないんですけど、今年初めてしてみたんです。『島々清しゃ』でもあったように、映画や芝居に対して、自分の体が喜びや愛おしさを感じ続けられるようでありたいって。これからも体がそう感じる作品になるべく多く出合っていきたいです」と独特の言い回しで、今後の展望を語った。
「島々清しゃ(しまじまかいしゃ)」は、2017年1月21日から東京・テアトル新宿ほか全国順次公開。
第29回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。