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2016.11.10 [イベントレポート]
「私が雪女だとしたら、相手を葛藤させてこの世を去りたいなという願望がありました」コンペティション『雪女』-10/31(月):Q&A

雪女

©2016 TIFF

10/31(月)、コンペティション『雪女』の上映後、杉野希妃監督(監督/女優)をお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
 
司会:監督からお話をいただく前に、巳之吉からメッセージが届いていると伺いました(笑)。そちらを披露していただけますか。
 
杉野希妃監督(以下、監督):では、巳之吉役の青木崇高さんからメッセージをいただいたので、読ませていただきます。
 
「本日は劇場にお越しくださった皆様、ありがとうございました。巳之吉を演じました青木崇高です。劇場に足を運べず申し訳ありません。撮影した広島県は監督の故郷でもあり、素晴らしい風景や時間が味方してくれ、色濃く映画に焼き付いてくれたと思います。やはり自然まで味方につける杉野監督こそ、雪女そのものだったのでしょう。私自身、監督が描く素晴らしい景色と『雪女』の世界の住人になれて幸せでした。皆様、『雪女』を観てくださって本当にありがとうございました。ではこのあとQ&Aがありますので、どんどんご質問、よろしくお願いいたします。」
 
Q:昭和時代の雪女は妖怪的な怖いイメージでしたが、この映画を観ている限り、死期が迫った人間の魂をあの世へ送る死神のような存在に見えて、そこまで怖さは感じられない、優しい存在に見えました。監督は雪女をどういった存在として映画の中で描こうとしたのでしょうか。
 
監督:素敵な質問ありがとうございます。私はこの物語をホラー映画として捉えていません。原作を読んだ時、雪女の恐ろしさもそうなのですが、それに翻弄される巳之吉や、雪女と人間の混血であるウメとはどういう存在なのだろうということを感じました。それをベースにしながら人間ドラマをより深く描いていきたいと思っていたので、雪女を、人を殺す存在ということではなく、死を迎えに行く存在として、この映画では描いております。
また、人間誰しも、得体のしれなさというものを、自分とは違った遠いものだと捉えがちだと思うのですが、私はむしろ、人間の心の中にあるものが得体のしれないものではないかと思います。自分自身のことを100パーセントは分かりえないというのが人間だと思うので、そういう得体のしれなさ、皆さんの自分の中に潜む、少し身近な感覚というのを大切にしながらこの作品を撮ったつもりです。
 
Q:ウメちゃんが運動場で太鼓に合わせて踊っていましたが、あれはオリジナルの体操なのですか。それとも、どこかの地方の体操ですか。
 
監督:体操は既存のものではなく、振付の方にこの映画の脚本を読んでいただいたうえで、オリジナルで作っていただきました。中学生、高校生が真似しやすく、昔の村で受け継がれてきたような簡単な踊りを作ってくださいとオーダーしたところ、あの踊りが生まれました。
 
Q:監督は映画の審査員もされていると思いますが、審査員的に見てこの作品はどのように思いますか。また、審査員として見ると、主演女優の杉野希妃をどのように思いますか。
 
監督:そうですね、賞をとりやすい作品と取りにくい作品というのはなんとなく分かっていまして、この作品に関してはとりにくい作品かなと思います(笑)。
やはり、社会性と強烈なメッセージが込められている作品の方が(賞を)とりやすいというのは分かっているのですが、どちらかというとこの作品は狭間を描いているというか、曖昧でいいじゃないか、その曖昧さにむしろ可能性を見出したいというような作品です。審査委員の方がどこまでそういう感覚を理解してくださるかはわかりませんが、賞に関してはまったく期待しておりません。
 
司会:こういったクラシカルな日本映画を作るにあたって、海外のお客さんを意識されましたか?
 
監督:海外のお客様にも理解できるようにということはそこまで考えなかったのですが、できる限り余白の多い作品にしたいとは思っていました。脚本や編集のラフカットの段階で饒舌な部分がたくさんあったので、そこをかなりそぎ落とし、流れる空気など、見えないものの感覚を大切にしながら編集作業を進めていきました。
 
Q:内側からにじみ出てくるような青木崇高さんの演技は、どのように演出されたのですか。眼差しなどのシーンが多いですが、監督自身が主役を演じながら、ご自身の演出はどのようにしていたのでしょうか。
 
監督:雪女だと分かった上で、巳之吉が告白するところが原作とは違うと思いますが、私が原作を読んだときに巳之吉がまぬけだなと思ってしまって(笑)。それはそれで素敵だとは思いますが、私がもし雪女だとして、この世から去らなければならないなら相手を葛藤させて去りたいなという願望がありました。なので、巳之吉の葛藤する姿を踏まえて、人間味のあるエネルギッシュな方、雪女がこの人との子供を子孫として残したいと思える方に演じていただきたいと考えて、脚本の段階から青木崇高さんを想像しながら書きました。青木さんに巳之吉を演じてもらったというよりは、青木さんと一緒に巳之吉像を作っていったような感覚があります。一緒にディスカッションをしながら、この部分の巳之吉はスタンスがこうだよねとか、ちょっとした一言を削るかどうかもすごく話し合いながら作り上げたキャラクターなので、そういうところが作品に出ていたらいいなと思います。
2つ目の質問に関しては、今までと違った形でのアプローチだったような気がします。今までは、監督兼女優というのは杉野希妃から派生して監督から女優へという1つの方向に向かっていました。この作品に関しては、そういったアプローチだと難しくなってしまうと感じたので、完全に女優は別の人格で、監督としては杉野希妃という自分ではない別の女優にダメ出しを繰り返しながら進めていきました。すごく俯瞰の視点が求められた作品でした。
 
Q:先ほどの青木さんのメッセージの中で自然を味方につけたとありましたが、奇跡的なシーンはありましたか?
 
監督:この作品は2月の末から3月の初めの2週間くらいの間に撮影していました。必要なところで雪が降ったことが3~4回ありましたね。
例えば、巳之吉の母のハルが亡くなったあと、ユキと抱き合うシーンで雪が欲しかったのですが、撮影のスケジュール的に時間がなくて、作った雪を降らすことができないとプロデューサーに言われて泣く泣く断念していました。しかし、撮影を始める直前に実際に雪が降って、奇跡的に撮れたんです。
もう1つ、ウメとミキオが渡し舟に乗って山小屋に向かう場面も本来は雪がないシーンでしたが、突然雪が降り始めて、まるでミキオの死を予感させるようで、こんなタイミングで雪が降るのかと皆で驚いていました。
 
Q:撮影の難しさについてお伺いしたいです。どのくらい屋外で、どのくらい屋内で撮影したのか教えていただけますか。また、温泉の部分が特に興味深いのですが、そこはどうでしたか。
 
監督:半々くらいだったと思います。広島の北の庄原での撮影でとても寒く、雪が沢山残っていたので、カメラの位置をどうするか、どう撮っていくか考えるのが大変でした。
一番こだわっていたのはオープニングのシーンです。私が「冬眠ショット」と呼んでいるものがあって、動物が地面の下から顔を出しているような、巳之吉と茂作を覗いて2人の行く末を見守るような感じで撮ってくださいと頼みました。撮影監督の上野さんが悩まれていましたが、おかげで面白い画になってよかったです。
温泉のシーンに関しては、役者が2人温泉に浸かっていなければいけなかったので、長くは撮影できませんでした。ワイドショットとクローズアップで2回だけ、それぞれ10分で撮ったので、意外にさっくり終わった印象です。
 
Q:僕と横に座っている彼は映画学校に通っています。上野さんは師匠で、たまに監督と演者になることがあります。杉野さんと比べたらまだまだですが、今後のアドバイスをいただけますでしょうか。
 
監督:監督と演者の両方をすることによって、いろいろな人からいろいろなことを言われると思います。中途半端になるから止めたほうがいいだとか、私も散々言われました。でも、やりながら、自分のやりたい方向性が見えてくると思います。誰に何を言われても自分のやりたいことを突き詰めて、自分を信じてやっていただきたいですし、私もそういう仲間を増やしていきたいです。私もまだまだ未熟なので、一緒に頑張りましょう!
 
司会:最後に一言お願いします。
 
監督:この作品は2016年3月4日からヒューマントラストシネマ有楽町他で順次公開されることが決まりました。もし気に入っていただけましたら、周りの方をお呼びいただけたらと思います。もし気に入らなかったら、黙っていていただけたらと思います(笑)。今日は本当にありがとうございました。

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