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2016.11.07 [イベントレポート]
「主演のミアの顔は雄弁で、すごくインスピレーションが湧いてくる表情を湛えているんです」コンペティション『私に構わないで』-11/1(火):Q&A 

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©2016 TIFF

11/1(火)コンペティション『私に構わないで』の上映後、ハナ・ユシッチさん(監督/脚本)、ミア・ペトリチェヴィッチさん(女優)をお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
 
ハナ・ユシッチ監督(以下、監督):今日はお越しくださいまして、ありがとうございます。そして、この映画を最後までご覧いただき感謝しています。楽しんでいただけたら幸いです。
 
ミア・ペトリチェヴィッチ(以下、ミアさん):皆さん、私はミアです。来てくださってありがとうございます。
 
司会:映画の主人公はとても特殊なキャラクターです。のちに改善していくわけですが、最初は一言でいえば性格が悪いように思えます。この個性的なキャラクターをどのようにして思いついたのでしょうか。
 
監督:私の目から見ると、主人公マリヤナは決して性格が悪くはなく、私に似ているところがあるのですが、言うなれば、自分の居場所を探している小動物のようなところがあるのだと思います。獣のような家族の中で自分の幸せを自分で見出さなければならない、気の休まらない環境で自分の安らぎを戦いながら勝ち取っていかなければならない、だからずっとキリキリしているわけですね。決して悪い人というわけではないのです。
 
司会:ミアさんはこのキャラクターを理解するのは時間がかかりましたか。
 
ミアさん:そうですね、監督と1年間くらい話し合いました。会話しながら意見交換して、努力もしましたし。結果がいいことを願っています。
 
Q:クロースアップを多用されていて、セリフを言わなくても分かるような目の演技が印象的でした。クロースアップを用いた意図を教えてください。
 
監督:今まで短編を何作か撮ってきましたが、短編では引きのショットを多用していました。ただ、今回は主人公の心に寄せて撮らなければいけないと意識していたので、あえてカメラを寄せてアップで撮りました。寄せれば心を映し出し、引けばそうではなくなるのはある種のクリシェ(ありふれた方法)ではあるのですが、ミアの顔が、あまりにもインスピレーションが沸いてくるような、そしてとても雄弁な表情を湛えているので、撮影中に眺めていてもとても印象に残りました。なので、直観的に寄せて撮った方がいいだろうと。映画をご覧になった皆様にも賛同していただけたらと思います。
 
Q:主人公が途中で車に乗った見ず知らずの男性に声をかけられ、突然浜辺で複数の男性と性行為をしたり、バーで中年男性からキスをせがまれて夢中になって応じたりしていますが、それまでの彼女の日常生活を見ているとそんな風には見えません。
また、その後、彼女はどんどん変わっていくように見え、最後は家を捨ててバスに乗っていく、そして途中でバスを降りて元の生活に戻っていくところが、わかるようでわからないような気がします。
監督はどのような意図でこのような脚本・演出をされたのでしょうか。そして、この作品は監督の実体験に基づいた話なのでしょうか。

 
監督:主人公のマリヤナは、強権的な父親や家族に抑圧された日々を送っていたところ、父親が倒れて彼女が自ら父親役となり、やっとちょっとした自由を勝ち得ます。しかし、それは彼女にとって重荷で、責任に押しつぶされそうになります。彼女は自分だけの何かを欲していて、見ず知らずの男性達との性行為は一方的に犯されているわけではなく、彼女が、自分だけの思い出といったら語弊がありますが――、家族とはシェアしなくてもいい何かを作りたくて、自らそういう行為に至っています。それは彼女にとっては初めてのチャレンジです。もちろん若い女の子だから性欲もあります。近親者との間でさえちゃんとした人間関係が構築できていないのですから、男の子と付き合うよりは見ず知らずの人と性行為をする方が彼女にとっては楽なのです。そういう意図があります。
自伝的な要素に関してですが、一切実体験に基づくことではありませんが、作品中のキャラクターの中で、周りの人から見聞きして参考にした部分があります。
 
Q:ミアさんはとてもお綺麗で、役の上では24歳ですが実際はおいくつでしょうか。
 
ミアさん:ありがとうございます。私は実は27歳です。
 
司会:登場人物に知り合いを投影しているとおっしゃっていましたが、その方々は作品をご覧になっているのでしょうか。
 
監督:まだ周りの人や参考にさせていただいた人には見せていません。クロアチアでは2週間後にプレミアを迎えるので、まだ公開されていません。まったくそのままなぞっているというキャラクターはいなくて、要素を借りている程度ですが、人は自分をよく思っているものなので、それが自分だと気づく人はいないと思います。
 
Q:プールと海中のシーンは人がごちゃごちゃいて、自由の中の不自由さを表現しているように感じました。実際の意図は何でしょうか。
 
監督:水中のシーンについて。最初は海で繰り広げられていますが、ここで描いているのはマリヤナの中の転換点です。父親が倒れてようやく普通の家族になれるのかと思いきや、一緒にいる女の子を見つめている弟を見てすごくかわいそうになってしまい、耐え難い悲しみが彼女を襲ってきます。そして、彼女が壊れて、ひとつの決断をします。もう耐えられない、家族から離れて自分の自由を見つけなければならないという決心に至るシーンです。最後のプールのシーンは真逆のことを描いていて、もはや逃れられない、家族とも離れることはできない、一緒に過ごしていこうということで、家族と一緒に潜り、周りにはいろいろな人の体がありますが、それは今の状態を受け入れたことを示します。
 
Q:主人公は鬱屈した生活を送っていますが、どのようにして演じたのか教えていただきたいです。
 
ミアさん:いろいろな難しいシーンがある中で、ハナさんと話して、マリヤナさんの役を自分でも理解することが大事なステップのひとつでした。お父さんが倒れるときやお兄さんを叩くとき、お母さんに叩かれるシーンはお互い話し合って、でも練習はせずに、その撮影する瞬間を大切にしようというところをふたりで話し合ったうえで撮影しました。私は私の中からマリヤナさんになりきることを心がけていました。
 
Q:ミアさんは演技をするのが初めてということですが、俳優の訓練を受けた方ではないのでしょうか。この映画のこの役にはどのように辿り着いたのでしょうか。
また、お母さんやお兄さんなどは、俳優なのかそうではないのか、監督に教えていただければと思います。

 
監督:劇中の人物では、母親はクロアチアの有名なコメディアンです。スタンドアップコメディとかもやりますし、テレビや舞台にも出ている女優さんですが、初めての映画出演です。とても綺麗な方で、長い金髪のとてもスタイルの良い方です。一緒にベネチア映画祭に行きましたが、誰にも気がつかれなくて、彼女は気がつかれないことを喜んでいました。
お兄さん役はクロアチアでは有名で、非常に優秀な役者さんです。ゾランという役に基づいた短編を彼とやりました。あの役はふたりで作り上げたもので、完璧にできるのは彼しかいないと思っています。そういうことで彼をキャスティングしています。
ちなみに父親役は、クロアチア生まれの方ですが、実は30年ほど前デンマークに移住して、そちらで活躍されています。20年ほど前の映画、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『プッシャー』に、マイロ役で出ている俳優さんです。
 
ミアさん:夏休みをヴィス島で過ごしているときに、たまたまハナさんが私を見かけて、映画を撮影するから連絡先を教えていただけませんかとアプローチしてくれて、よくわからないで連絡先を渡しました。私が思っていたのは、大学生達の映画かなんかで手伝いかなと思っていました。そしたら連絡がきて、オーディションだと聞き、どんな映画かわかってきました。最初はパニック状態というか、私で大丈夫かなと思っていましたが、アンジェラという役を演じるカルラという子とふたりで練習して、はじめにザグレブで1回、そして、そのあとにも2回オーディションをしました。最終的にハナさんが主役に私を選んでくれました。そのあと監督とお互い話し合って役の準備を進めていきました。
 
司会:最後にお別れの一言をいただけますか。
 
監督:質問がまだある方は外でもお聞きしますので、遠慮なく話しかけてください。ありがとうございました。

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