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2016.11.10 [イベントレポート]
「自分の実体験や強烈な疑似体験みたいなものが創作の原動力になります」 日本映画スプラッシュ『14の夜』-10/28(金):Q&A 

14の夜

©2016 TIFF

 
10/28(金)日本映画スプラッシュ『14の夜』の上映後、足立紳監督、佐藤現(プロデューサー)さんをお迎えし、Q&A が行われました。⇒作品詳細
 
司会:改めて今スクリーンでご覧になっての心境を監督にお伺いしてもよろしいでしょうか。
 
足立紳監督(以下、監督):あまり冷静には見られなかったのですが、今日初めて一般のお客さんに見ていただいて本当にすごくうれしい気持ちです。
 
佐藤現さん(プロデューサー、以下、佐藤さん):こんなに街がハロウィンで仮装している中で、こんなおっぱいが揉めるか揉めないかという映画にたくさんの人にお越しいただきありがとうございます。大きな拍手をいただいて嬉しい限りです。
 
司会:まずお聞きしたいのですが『百円の恋』の爆発的な成功は足立さんにどのような影響をもたらしたのでしょうか?
 
監督:自分が書いていた脚本を人に読んでもらえるようになったというのが一番大きかったのではないかと思います。それまではどなたに脚本を持って行っても、「はい、じゃあ預かっておきます」っていう感じで終わっていたのですが、それがきちんと読んでもらえるようになったというのが1番大きな違いですね。
 
司会:『百円の恋』では脚本担当でしたが、この『14の夜』を監督しようというのはどの段階で出てきた話なのでしょうか。
 
監督:もともと私がこの業界に入ったときも助監督としてキャリアをスタートしたので、いつか監督をやってみたいという気持ちはありました。先輩が監督デビューをするときにシナリオを書かないかと言われたのがきっかけで脚本を書き始めたんですが…。
 
司会:それは『キャッチボール屋』のことですか。
 
監督:いえ、それよりも以前のことです。そしてその頃は、もしかしたらシナリオライターとして売れっ子になった方が早く監督になれるんじゃないかという甘い考えがありました。そうした背景があってシナリオの方に比重が移っていったということがありました。
 
司会:その後『百円の恋』の勢いがあって、監督をやってみようとなったのはいつ頃なのでしょうか。
 
監督:本当はこの作品も自主制作でやろうと思っていました。実はプロット自体は『百円の恋』よりも以前から出来上がっていて、自分でやろうと思っていた時に佐藤さんにお見せする機会があって、じゃあ一緒にやりましょうということになりました。
 
司会:佐藤さんはいつごろから足立さんの存在をご存じだったのでしょうか。
 
佐藤さん:足立さんが『百円の恋』で松田優作賞のグランプリを受賞されて、ただあの賞はとったところで映画化が保証されている賞というわけではなく、足立さんが脚本を持って武監督(『百円の恋』)と一緒に営業をされている中で、私も読ませてもらう機会があったんです。その脚本にすごく痺れたので、ぜひ一緒にやりたいのだと伝えたことが最初のきっかけです。
 
司会:この『14の夜』のアイデアを聞いたときはどう思われましたか。
 
佐藤さん:プロットを読んだ時に、14歳の男の子たちがおっぱいを揉めるかどうかで悩むという話なのですが僕自身も14歳の時は半分くらいエロいことを考えていたような記憶があります。将来への不安と、純粋に恋心を抱く気持ち、あるいは大人になっていく中で大人に反発する気持ちとか、いろいろとないまぜになっている歪な感情があり、一方でエロいことばっかり考えているというところがすごく上手く表現されていて、自分の少年時代そのままだな、自分の映画だなって思えるところがあったんです。私がそう思うということは、同じような世代の方々にも「これは自分の映画だ、観るべき映画だ」と思う人がたくさんいるんじゃないかと感じました。そしてまた、少年が一晩で少し大人になるという、その成長劇としてもすごくいいとも思いました。
 
司会:そのときには既に、監督も足立さんで行こうという気持ちがあったということですか?
 
プロデューサー:そうですね。そもそも企画の始まりの時点で、足立さんはどんな作品を監督したいのかという話から始まっていたので。ただこの「少年がおっぱいを揉みたくて悩んでいる」っていう話は、低予算であってもなかなか作れないのではないかと思っていました。ただ『百円の恋』の成功があって、これ作るなら今しかないかなって感じたので、急いで企画して映画化しました。
 
司会:私もほぼ同世代で非常に共感する部分がありました。ただのおっぱいの映画だったらどうしようかなって拝見したのですが、廃車場でスクールカーストについて訥々と語るシーンの素晴らしさや、家族の物語であったりとか、すごく深いレイヤーが映画に含まれていて、これは素晴らしいなと思いました。監督は脚本の中でそうしたバランスととることに非常に気を遣われたのではないかと思います。どのようなところを注意しながら書かれたのかお聞かせください。
 
監督:私は中高生くらいの時から、ラジオで芸能人の話を聞きながら、学校の中でトップグループか、一番下のグループか、どちらの人が将来ビッグになっているのかなと思っている時期がありました。で、残りの8割ぐらいの中間層にあたるような人達、特に自分なんかはその中のちょっと下の方にいて、普通の人生という表現が正しいのか分かりませんが、そういう人達はどうすりゃいいのかなっていう気持ちでいたんですよね。そういう人達に向けて何か作品を作れたらなっていう気持ちがありました。
 
司会:監督は男子校でしたか。
 
監督:いえ、一応共学だったんですが、極端に女子が少ない学校ではありました(笑)
 
Q:この映画の中で何%くらいが実話やご自身の体験談に基づくものなのでしょうか。
 
監督:6割5分くらいでしょうか(笑)
 
司会:もう少し掘り下げてみましょうか。例えばAV女優が街にやってくる噂で盛り上がるシーンも実話に基づくものなのでしょうか。
 
監督:そのシーンも実際に中学の頃にあって、しかも12時を過ぎるとおっぱいを触らせてくれるらしいなんていう尾ひれがついた噂がたちました。実際に行ったんですが、結局そのときは何もなくてただ帰ってきただけでした。あるいはミツルみたいな友達がいて、そいつにひどい目に遭わされた日とか、いくつかの実際の体験をミックスさせて、1日の話に仕上げたという感じです。
 
 
司会:4人の少年たちのあいだの関係構築はどのように進められたのでしょうか。
 
監督:私も初めての監督で、しかも4人は子供たちだったのでこれは絶対にリハーサルしておかないと絶対まずいだろうと思っていました。そこで大人の俳優さんたちも含めてリハーサルの時間をたっぷりとってもらったんですが、実際何をやればよいのかが分からなかったんです。脚本を読んでもらい、実際に動いてもらって、いいような気もするしなんか違う気もするという中で準備をしていて、4人も何がよくて何がダメなんだろうっていうのが分からないまま現場に突入したんです。でも初日にやってみたら「この4人すごくいいじゃん!」「なんでリハーサルのときとこんなに違うんだろう」って思って、自分でも感激しながら撮影したのを覚えています。それがどうしてこんなに変わったのかは自分でも分からないです。
 
司会:佐藤さんの目から見ていかがですか?
 
佐藤さん:足立さんはいつもこのあたりの話になると、自分は何もしてなかったかのようなことを言うんですが、リハーサルでもこんなことをするんだと感心しながら見ていました。例えば役の中の設定で4人にずっと雑談をさせるとか、最初は人見知りで壁のある子供もいる中で、どんどん関係性が深まっていくのを見ていました。そんな感じでやっていくと、だんだん子供たちからもこうした方が面白いんじゃないかというアイデアが出てくるんです。逆にこれはやめた方がいいんじゃないかとか。なので撮影が進むに従ってどんどんよくなっていく様子を傍から見ていました。
 
司会:監督は、4人の子供達に脚本の方を合わせていくように作っていったのですか?
 
監督:そうですね。その場で思いついたことを好き勝手言いすぎて、彼らも途中で困ってることもあったのですが、4人のリハーサルを見ていてどんどん新しい台詞が出てきたので、それは彼らが非常によくやってくれた成果だと思っています。
 
司会:脚本家の立場としては、監督に台詞を変えられるのは嫌なものなのでしょうか。
 
監督:私も脚本家として現場に立ち会うことがあるのですが、実際に見てみて「あれ、この台詞って全然よくないんだな」と思うことがあって。でも、なかなか「面白くないので変えたいです」って言えない場合があります。なので、全然他の方から変えようと言ってもらっても構わないんですけどね。ただ監督さんたちは気を遣ってか、そのままやってくださいって言われることが多いです。実際俳優さんが演じてみると汗が噴き出るようなセリフだったんだなって後で感じることも多いです。
 
司会:非常に興味深い話ですね。
 
佐藤さん:だから今回も現場でどんどん変えたりしてましたよね。
 
監督:はい。ただ現場でスタッフさんに内緒でセリフを変えたりすると、録音の方が困るとか、そういうところをよく分かっていなかったので、結構それで怒られたりしました。リハーサルでこう言ってたからここにマイク出してるのに、なんで勝手に変えてんだよ、みたいな。
 
佐藤さん:あと言ってはいけないような言葉が入っちゃったりとかもありましたね。ここでも言えないような言葉だったり。
 
Q:劇中で、息子から散々バカにされつつもお父さんが「かっこ悪いのは俺のせいじゃなくておまえ自身の問題だ」というシーンや、ミツルにパンチを食らうシーン、そういったものを乗り越えていくことが次の成長につながるというのがこの映画の1つのテーマなのかと思いながら観ていました。この台詞やシーンは、お父さん世代向けに付け加えたものなのか、最初から用意されていたテーマなのかどちらなのでしょか?
 
監督:最初の段階の脚本では、そのお父さんの台詞はなくて、ただタカシにはそれはどうしても突き付けたいと思っていました。でも、お父さんにそれを言わせるとちょっとカッコよくなりすぎちゃうかなとか、いろいろ考えました。悩みに悩んで最終的にお父さんに言わせることにしたのですが、それはお父さんへのサービスというよりは、タカシみたいな子が映画を観ていたら、彼らにちょっとグサッときてほしいという思いから付け加えることにしました。
 
司会:あの台詞が出てからラストまでの展開は本当に見事で、これ以上ないんじゃないかと感じたのですが、あのラストの泣き笑いのシーンは最初からイメージされていたものなのでしょうか。
 
監督:泣き笑いとは脚本には書いていて、あそこだけリハーサルも行わず、ぶっつけ本番でした。犬飼君(タカシ役)は演技とかほとんど未経験だったんですが、順撮りができるようなスケジュールでもなくて。それで撮影4~5日目くらいにあのラストシーンの撮影だったので、すごく賭けだなという気はしていました。あのシーンはリハーサルしてしまうとその通りにしかならないような気がしたので、リハーサルやらずに進めるけどごめんねって断った上で撮影を進めました。彼はいろいろ考えて、それまでの気持ちを作ったうえで臨んでくれて、一発で撮ることができました。
 
司会:初の現場撮影を終えて、初監督で編集作業を行うというのはどういった作業でしたか?
 
監督:編集はほとんど洲崎さんに任せっきりでした。この作品は台本段階で若い女性からのウケがよくなかったんですよね。それで非常に不安だったんですが、洲崎さんがタカシたちに寄り添いながら、まるで母親のように編集作業をされているのを見て、もうお任せしようと思いました。
 
佐藤さん:洲崎さんは『百円の恋』など、ほかの作品でもご一緒していて非常に信頼しています。ただ足立さんは任せっきりと言っていますが、非常に細かいところまでこだわっていて、私もたまに思ったところを「ちょっと試してみてもらえませんか」と頼んでみたりして、みんなで協力しながら進めた感じです。
 
司会:今後はどのような話を脚本監督していくのでしょうか。やはり自伝的な話を掘り下げるのか、それともまた違った話を造っていくのか。
 
監督:やる機会があれば何でもやりたいのですが、既にいくつか台本を用意しています。中には自伝的なものもありますし、全然自分とは関係ないものもあります。基本的には『百円の恋』や『お盆の弟』みたいに、自分の実体験や強烈な疑似体験みたいなものが創作の原動力になるので、そういったものの方が多くなるとは思います。また、今回も大人の俳優さんは出ていますが、次はもっとがっしりと大人のお芝居を作ってみたいという気はしています。
 
司会:ぜひそうした作品も拝見したいですね。どうしても女性のご感想などが聞いてみたいのですがどなたかいかがでしょうか。
 
Q:足立監督はいつも謙虚でニコニコしていて、やはり周りの人も助けてあげたくなるのかなぁと。それが足立さんの隠し玉なのかと思っていたのですがどうなのでしょうか。
 
監督:隠し玉かどうかは分かりませんが、撮影の時にも同じように甘え上手みたいに言われたことはあります。自分では何もわからずヘラヘラしているだけなので、それでスタッフの皆さんがフォローしてくれているという感じでした。
 
司会:最後に監督からひと言いただけますでしょうか。
 
監督:本当にこんな遅い時間まで残っていただいてありがとうございました。恒例なのですが、いいと思ったら周りの方に是非ちょっとでも宣伝してもらえたらと思います。今日はどうもありがとうございました。

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